2018年3月28日水曜日

総合的に考える方法② (自分の頭で考える哲学的思考法4)


 今回は、「自分の頭で考える哲学的思考法」の4回目として、
「(総合的に考えて)結論をだす方法」
 についてお話しいたします。

1回目から読む場合は、こちらの記事をご閲覧ください。
「無知の知」はソクラテスの落胆だった? (自分の頭で考える哲学的思考法1)


 前回の記事のなかで、
肯定要素(プラス面)否定要素(マイナス面)の両面から考察をする」
 ということについてお話しいたしました。

こちらをご参照ください。
総合的に考える方法① (自分の頭で考える哲学的思考法3)


 そして、
「肯定側の主張にも、否定側の主張にも、それぞれに理(り)があるというのなら、『正しい意見』を判別することなんてできないんじゃないのか?」
 という疑問がわきあがってきます。

 この世界のどんなことであれ、肯定要素(プラス面)否定要素(マイナス面)が存在します。
 対極しているその両面には、それぞれに理があります。

 ですので、「絶対的に正しい」というものを定義することはできません

 ただ、
「あなたはどう思うのか?」
 については、結論(答え)をだすことができます

 そしてその結論が、真の哲学(あなたの哲学)になります。


総合的に考え、結論(答え)をだす


 考察の段階で、できるだけ多くの観点と、さまざまな角度から、分析・検証を重ねます。

 とくに、

 肯定側否定側 
プラス面マイナス面

 その両極面からの検証は、かならずおこないます。

 できるかぎり多くの情報を集めることが望ましいです。
 この思考法は「総合的に考える」という方法ですので、より広い観点から考察したほうが結論の質が高くなります

 時間と手間(てま)はかかりますが、検証する材料が多く、結論までの考察をたくさん重ねるほど、あなたの結論(あなたの哲学)がより深みのある『答え』になります。


結論(答え)への導き方の例


<合理主義的に結論をだす>

 理性的な判断によって、結論へと導きます。

論理的な判断
推理
善し悪しの価値観
優劣の判定
利益の有無

 それらの要素をもとに考察し、結論をだします。

 数値化して検証する――
 という人も、合理主義タイプになります。



<経験論的に結論をだす>

 実際に自分や他人が経験したことをもとに、結論へと導きます。

自分が実際に経験したこと
人々のあいだに起こった実例

 それらのことを重視して考察し、結論をだします。

 直観(ちょっかん)によって判断をくだす人も、経験論タイプになります。

哲学では、「直観は経験からくるもの」と考えられています。
「直観」という表記は哲学用語です。
 厳密に言うと、哲学の「直」と、一般的な「直」は微妙に意味合いがちがうのですが、どちらも「推理や論理的思考によらず、感覚的に瞬時に答えを感じとる」という意味であり、基本的には同義語です。



<両極の肯定要素を採用する>

 肯定意見(賛成派)と否定意見(反対派)、どちらの主張にも理があるのだから、それぞれの利点をケース・バイ・ケース(状況に合わせて)で活用しよう――
 という発想で結論へと導きます。

 たとえば、前回の記事で例題に使った「多数決」について考察する場合、

**********
 ○○や××のケースにおいては、多数決で決定したほうがいい。

 しかし、△△や□□のケースにおいては、少数派の意見を採用したほうが正しい決定がくだせる。
**********

 というようなかたちで、それぞれの利点を活かす方法を検証します。

 つまり、「どちらが正しい」という判定をするのではなく、
「このケースでは、どちらのほうが有効か?」
 ということを考え、ケースによる分類をし、それを結論(答え)にするのです。

 みずから「対策マニュアル」をつくるような危機管理能力の高い人や、「目的を達成するためならありとあらゆる手段を検証する」というような結果主義の人は、このタイプに属することが多いです。



<ハートで決める>

 マインド(理性=思考する心)を使わずに、ハート(感情=感じる心)を使って結論をくだします。

 この世界のどんなことであれ、肯定要素(プラス面)と否定要素(マイナス面)が存在し、対極しているその両面にはそれぞれ理があります。
 そのため「絶対的に正しい」というものを定義することはできません。

 だったら、
「正しいか、まちがっているか = マインドの判断」
 を使わずに、ハート(感情)を基準にして判断しよう、という発想です。

 ハートは、「好き(快)」「嫌い(不快)」で物事を判断します。

 つまり、
「私の場合はどちらのほうが好きなのか?」
 それで決定をくだすのです。

 ハート(感情心)が発達している人は、愛情や共感する心が豊かなため、
「どちらのほうがやさしいのか?」
「どちらが『愛』にかなっているのか?」
 ということを判断基準にして決めることもあります。


あなた独自の結論 そこに個性があらわれる


 ここで挙げた思考法は、結論をだす考察のしかたの主(おも)な例です。
 人によって、もっとたくさんの結論のだし方があると思います。

 ほとんどの場合、自分のタイプに合った結論のだし方を、無意識的に選んで結論へと導いています。
 さらに哲学的な思考(総合的に考える)に慣れてくると、考えるテーマによって思考のしかたを変えて結論をだせるようになってきます。

 いま、このお話を読んで、
「結論をだすための考え方って、人によってそんなにたくさんあるの!?」
 と驚いた人もいるかもしれませんが……

 だから言ってるじゃないですか、「自分の頭で考えると個性がでる」って(笑

こちらをご参照ください。
自分の頭で考える それが個性のはじまり


 ぶっちゃけ、「なんでも有り」なんです(笑
 自分自身が納得のいく結論(答え)にたどり着けるのであれば、どんな思考のしかたをしたってかまわないんです。
 そりゃ、個性がでますよね。

 僕の父は哲学者だったのですが、父がつくる試験問題はいつも、
「何かテーマを与え、制限時間内にそれについての論文を書く」
 というものでした。

 答案には、学生によって結論へ導くまでの思考のしかたに個性が色濃くあらわれていたそうです。
 父はそれを見て、楽しんでましたね(笑


あなたがだした『答え』には、とほうもない価値がある


 もともと、「どれが絶対的に正しいかについては定義ができない」ということを前提にしたうえで考察をしています。
 ですので、思考の過程や結論が人それぞれになるのは、あたりまえのことなんですね。

 だからこそ、それによって導きだされた結論は、あなたの『答え』であり、あなたの哲学であると言えるんですね。

たとえ、あなたの考察によって導きだされた結論が、けっきょく一般論と変わらなかったとしても――

たとえ、周囲の人々があなたの結論を否定したとしても――

 その結論(答え)には、とほうもない価値があります。
 あなたの『信念』として、つらぬくだけの意義があります。

あなたのその結論は、
誰かの主張の受け売りではなく、
あなた自身の『心』によってたどりついた、
あなたの主張――あなたの哲学だからです。

 次のお話を読む


自分の頭で考える哲学的思考法
「無知の知」はソクラテスの落胆だった? (1)
まけない議論のやり方(2)
総合的に考える方法①(3)
総合的に考える方法②(4) 当記事
弁証法でレベルアップする方法①(5)
弁証法でレベルアップする方法②(6)
本質を突き詰めていく思考法(7)

この記事は、哲学者だった本条克明の父が、西洋哲学の知識のない本条克明にもわかるようにかみくだいて説明してくれた内容をそのままお伝えしており、「知識」としてではなく「人生で役立つ話」として哲学が語られています。「学問」としての哲学ではなく「実践するための哲学」として語られた内容であることをご了承のうえご参考ください。