2018年2月21日水曜日

『自分の言葉』で書く能力を養う文章練習法


 以前に投稿した「小説の執筆をする」という記事のなかで、僕はこんなことを書いています。

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 僕は以前に、
「『自分の言葉』って、なんだろう?」
 と自問自答をくり返し、
「おそらく、最初に思い浮かんだ言葉が『自分の言葉』なんだ」
 と思い至りました。

 そのため、第一稿では言葉を選ばずに、最初に思い浮かんだ言葉をそのまま書くようにしています。

詳しくはこちらをご参照ください。
小説の執筆をする (本条克明の小説作法5)
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 今回はこの記述の補足として、
「『自分の言葉』を引きだす文章練習法」
 について、お話しいたします。


内側から言葉がやってくる感覚をみがく


「言葉を選ばずに、最初に思い浮かんだ言葉をそのまま書く」
 というやり方を試してみたけど、うまくできなかった――

 そういう人もいるかと思います。

 この方法がうまくいかないのは、
「最初に思い浮かんだ言葉をすぐに書こうとしているんだけど、言葉自体がすぐに頭に浮かんでこない」
 というケースがほとんどだと思います。

 僕の場合は、次のような練習法をおこなうことで、
「自分の内側から、瞬間的に言葉を得る」
 という能力を高めることができました。


「自分の言葉」で書く能力を養う文章練習法


 まず、この練習法をおこなうための時間を確保します。
 10分~15分ていどでもかまいません。
もちろん、もっと長いほうが好ましいです。長いほうがより早く効果があらわれます。

 時間を決めたら、キッチンタイマーなどでその時間をセットします。
タイマーがない場合は、なくてもかまいません。

 文章の練習は、手書きでもワープロでもかまいません。
「文章は手書きで練習したほうがいい」という人もいますが、明確な根拠はありません。
 手書きでもワープロでも文章にはちがいありませんので、書けばかならず練習になります。

 僕の場合は、この練習法をおこなうときはいつもワープロを使っています。
 手書きよりもワープロのほうが速く書けるので、「思考」と「書く」という動作のあいだにタイムラグ(時間差)が少ないからです。


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<具体的なやり方>

 練習をはじめる準備が整ったら、タイマーをスタートさせます。
タイマーがない場合は、だいたいでかまわないので、時間になったら終わらせるようにしましょう。

 そして、頭に思い浮かんだことを、すべて、そのまま書いていきます

小説や創作とはぜんぜん関係のないことでも、
ぜんぜん脈絡(みゃくらく)のないことでも、
意味不明な思考であっても、

 思い浮かんだことは脳内検閲(のうない・けんえつ)をせずに、すべて、あまさず、正直に書いていきます。

 つまりこれは、
「思考をそのまま書きとめる」
 という練習法です。


 もしも、つづけているうちに、
「ああ、もう何も思い浮かばなくなったなぁ……」
 と思ったら――
 そのまま素直に、

ああ、もう何も思い浮かばなくなったなぁ……

 と、書き記しましょう(笑

 そして、本当に何も思い浮かばなくなった場合は――
 その「無思考」の状態に、しばらくひたりましょう。

 その心理状態は、瞑想家が渇望(かつぼう)している「無心」の状態です。
 たいへん貴重な精神状態ですので、無思考がつづくかぎり、その状態にひたってみましょう。
彫像になったかのように静止していると、無思考の状態を長くたもつことができます。

 そして、また思考がもどってきたら、「思考をそのまま書きとめる」を再開しましょう。

 時間がくるまで、ひたすら思い浮かんだことを、すべて書きとめます。

 タイマーが鳴ったら(時間がきたら)、終了です。
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 この練習を積み重ねると、

  • ワープロ(もしくは原稿用紙)に向かったときに、書くべき言葉がスムーズに頭に思い浮かぶようになる
  • 思い浮かんだ言葉を手が反射的に文章にするようになり、書くスピードが速くなる

 という効果があらわれてきます。


「最近、自分の言葉で書けている気がしないな……」と思ったら、この練習法で『自分の言葉』をとりもどす


 最初に思い浮かんだ言葉が『自分の言葉』――
 という僕の説が正しいと仮定した場合、「自分の言葉で書く能力」をこの練習法で養うことができます。

 僕はいまでも、
「最近、言葉がスムーズに思い浮かばなくなってきたな……」
 とか、
「なんとなく、自分の言葉で書けている気がしないな……」
 と感じたときは、この練習法をおこなって、

 自分の言葉で書く最初に思いついたことをそのまま書く

 という感覚をとりもどすようにしています。


自分のマインド(心)を自覚する瞑想法


 余談になりますが――

 この方法、じつを言うと、もともとは「文章の練習法」としてはじめたわけじゃなかったりします。
 最初は、鬱(うつ)になっていた時期に、瞑想の一環(いっかん)としてはじめました。

『オレンジ・ブック』という本に記載されている、20世紀インドの神秘家、OSHO(オショー)という人物が説いた、
「思考を書きとめよ」
 という技法がもとになっています。

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 あなたの部屋を閉めきってその中に坐り
 自分の思考を書きとりはじめてごらん
 あなたの頭脳(マインド)にはいり込んできた何もかもをだ――

出典:『オレンジ・ブック OSHOの瞑想テクニック』 OSHO(和尚):著 スワミ・トシ・ヒロ:訳  ホリスティック・セラピー研究所:発行 めるくまーる:販売(1984年)
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 OSHOはこの方法を、
「マインド(思考する心)というものが、どれほど狂っているか(いかにネガティブで騒々しいものであるか)」
 を自覚するための技法として紹介しているのですが……

 実際にやってみたら、
「思考が出尽くして思い浮かばなくなった瞬間に、瞑想状態(無心の状態=リラックスした中立の精神状態)になる」
 という効果があったので、継続的に実践(じっせん)しました。

  すると今度は、
「最初に思いついたことをそのまま書く(率直な自分の言葉で書く)」
 ということが自然にできるようになり、文章力の向上につながったんですね(嬉

 以来、僕はこの方法を「自分の言葉で書く能力を養う文章練習法」として重宝(ちょうほう)しています(笑


 僕自身は「文章の練習法」として活用していますが、
「自分の『心(マインド)』についてもっと自覚できるようになりたい」
「書くことを瞑想にしたい」
 ということを求めている人には、精神修行の技法として役立つと思います。

 よろしければ、ぜひ参考になさってみてください。


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