2018年1月20日土曜日

「小説の書き方」はない……けど、ある


「小説の書き方」を教えてほしい――
 という人のために、作家の端くれとしてアドバイスを。

 はっきり言ってしまうと、「小説の書き方」なんてものはありません。
 ですので、あなたに「こうすれば小説が書ける」という方法をお教えすることはできません。

 ですが……

 でも、作家にはあるんですね、「小説の書き方」が。


小説の書き方はないけれど、作家にはある


「小説の書き方」なんてない――
 第一線で活躍している小説家はみな、そう言います。

 僕も、「小説の書き方」なんてないと思っています。
 というより、あったらおかしい。
 小説とは「散文形式で書かれた物語」のこと――つまり自由な形式で表現するのが原則なわけですから、「書き方」が存在した時点で小説の本質からはずれてしまいます。
「書き方」という『型』ができてしまったら、小説は芸術でも創作でもなくなると思います。

 ただ、すべての人に共通の『型』はありませんが、プロであれアマチュアであれ、小説を書く人には「小説の書き方」があります


なんらかのルールがなければ、創作はできない


 アメリカの文豪アーネスト・ヘミングウェイは、『老人と海』という作品がきっかけとなり、1954年にノーベル文学賞を受賞しました。

『老人と海』が優れた文学作品であることは、誰もが認めています。
 ですが、この作品を「ヘミングウェイの代表作」とすることに対しては、異論がとなえられています。
 というのも、この作品では、ヘミングウェイが自分で定めたルールを守らずに書いているからです。

 ヘミングウェイはハードボイルド文学の原点と言われており、簡潔で、心理描写の少ない表現方法を編みだした人物です。
 ところが『老人と海』では、文の書きはじめからピリオドまでが数行におよぶ長文があったり、大部分が心理描写で構成されていたりと、自分でつくりあげた手法を無視して書いています。

 そのため、
「『老人と海』をヘミングウェイの代表作とするのは正しくない」
 という声があがっているんですね。


 ヘミングウェイにかぎらず、小説家はみな「自分で定めたルール」を持っています
 プロであれアマチュアであれ、小説を書く人はみな、少なからず自分のルールを定めています。
 なんらかのルール(決まりごと)を設けていなければ、創作なんてできませんからね。


 誰にでも通用する「小説の書き方」はありません。
 あるのは、「自分にとっての書き方」すなわち、
「マイ・ルール(自分にとっての決まりごと)」
 だけです。

 小説家が「小説の書き方」に関する本を出すことがありますが、中身はハウツー本ではなく、その作家自身の小説作法(マイ・ルール)です。
 買われるときは、マニュアルではなく参考書であることを心得ておきましょう。

 小説の創作では、「これが正しい」というものはありません
 どんなことを語っても、それはその人個人の小説論であり、その人個人のマイ・ルールなんですね。


小説はオリジナリティが求められる世界 だから「小説の書き方」も……


「小説の書き方」なんてありません。
 作家はみな、「マイ・ルール(自分で定めた決まりごと)」に従って創作しています。
 つまり、「小説の書き方」は自分自身で築きあげる必要があるわけです。

 だって、ほら、小説や創作の世界というのは、作品のオリジナリティ(独創性)が求められているわけでしょ?

 だったら、「書き方(創作の仕方)」だって、オリジナルでなければおかしいですよね。
 人まねのやり方では、オリジナリティのある作品は生まれないのですから。


本当の小説作法


「自分独自の書き方(創作の仕方)」を築きあげる手段は、大きくわけてふたつです。

  • 創作していく過程で、もっといいやり方に気づいたら、それを自分のマイ・ルールにする
  • ほかの人たちの書き方(創作の仕方)を参考にして、そのなかに自分に合っているやり方があったら、マイ・ルールに取りいれる

 重要なのは、
「そのやり方が、自分に合っていること」
 それだけです。

 ぶっちゃけ、あなたに合っているのなら、どんなやり方をしたってかまわないんです(笑

 創作は、結果オーライの世界ですからね。
 どんな書き方をしたって、最終的に良い作品ができあがるのであれば、すべてオーケーなんですから。


 あなた独自の「書き方」で創作し、オリジナリティあふれる作品(あなたにしか書けない小説)をつくりあげてください。

 そしてそれが、あなたにとって、本当の「小説作法」です。